本当はクロワッサンなんて作りたくなかった話

誤解されそうなタイトル。

ひとつの会社で働いてきて、次に向かう場所やタイミングはきっと誰にも訪れる。

この会社に入ってずっとブレッドチームで仕事して、不満はなかった。

オーブン担当になって、自分たちが作り上げた生地がパンになって窯から出てくる光景を毎朝見られるのは何にも代えがたいものがあった。

自分が焼いているパンが人々の生活の糧になっている。

でっかい、食卓に上るパンをドカドカ焼く仕事こそがパン屋のあるべき姿だよな、と思っていた。

だから、心の中で半分は、緻密で細部に作業力を必要とするクロワッサンの作り方になんて関心がない、と思いこむようにしていたし、あと半分は、自分には多分できないな、という勝手なマイナスイメージを植え付けていた。

ところが、ブレッドチームでの仕事を一巡して、仕込みとオーブンを一通り覚えて、さらなるステップアップを考えたとき、折り込みをやらずにパン屋で働いてましたとはたして言えるのか?と考え始めた。

自分のやる店で出す、出さないはあとで決めればいい。

それよりも技術を習得しないで自らスキルアップの道を閉ざすほうが問題があるなと。

今いる足元を掘り下げて、このパン屋での学ぶべきことを完結させる。

常連も初めてのお客さんも、まずは手に取りやすいクロワッサンやパン・オ・ショコラを選ぶ人は多いし、コーヒーとの組み合わせで毎回注文してくれる人もたくさんいる。

この技術を身につければ、また多くの人達に自分のパンを食べてもらえるきっかけになるかもしれない。

そう思って、「折り込みを納得いくまで出来るようにする」ことを「卒論テーマ」に、イチから取り組もうと心に決めた。そこまでやったら、心置きなく次に向かえる。

そうして去年10月に別の製造拠点にいるヴィエノワズリーチームに移った。

配合を学んで、折り方を習得して、カット・成形をこなして、保管、焼くところまで。カットロスはどうするのか。温度管理はどうなのか。

まだまだ、勉強、勉強。

パンの修行におわりはない。最初はネガティブなイメージを持っていたクロワッサンの製造。
それが、チームにいる他の職人と意見やアイデアを交わしたり、うまくいかない時の改善方法を一緒に考えたりして、パンの奥深さに再び魅了されるきっかけになった。
カフェ文化が根付くニュージーランドでは、コーヒーとリッチな菓子パンを合わせる食べ方はどんどん深化していくはず。技術に伴って、意識そのものが前向きに変化してきたことが、ここまでで得られた少しの進歩だと思います。

有り難いことに、今の職場は新しいレシピや製法もどんどんチャレンジしてOKという文化なので、いろんなトライ&エラーを繰り返して、自分が目指すクロワッサンを追求していきます。

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