ボスのライ麦パン

小麦が育たないドイツではほぼ全てのパンにライ麦が配合されているらしい

最近、新作のパンが登場した。

ライ麦を全面に押し出した、でっかいパン。どっしりと鉛のように重い。
1つ売れ残ったので持って帰ってきて、なんとなくキッチンに置いておいた。
そしたら、近くを通るたびになんとも言えない香気成分が漂ってきて僕の足を止める。
焦がし醤油に海苔をあわせた、香ばしいの向こう側にまだ何かあるような、とても良い香り。なんなら、ずっと嗅いでたい。

翌日ブレッドチームのヘルプから戻ってきたボスを捕まえてどうやって作ってるか聞いてみた。すると、
「ライ麦70%にスペルト30%だよ。このパン作るためにライサワー種また起こしたよ。」

「あ、ライ80だったかな。いや、70・・・。あれ?どっちだったっけなー??忘れたー!メイビー80!」

「日本から返ってきたら時々ブレッドチーム来て一緒に作るべー!」

作り方とか聞いても、だいたい聞きたいことの10%くらいしか情報が入ってこない。
小学校に入る前から代々続くパン屋の厨房でおじいちゃんの手伝いをしていたボスにとって、パン作りは体に染み込んだ感覚そのもの。言葉で説明するより、「俺の横について覚えろ」、が質問に対するボスの答えなんだと思う。

ちょっと前まで作っていたライ麦100%のパンは超極厚クラストと独特な食感が僕には玄人向けすぎて、食べ方がわからずじまいだったけど、今回の新作は食べやすさに重きをおいた感じと良い塩梅の酸味が両立していて、同じパン屋にいながらさすがだなと思っている。ライ麦もスペルト小麦も南島のカンタベリー地方(クライストチャーチの近く)で作られた貴重な国産のビオ。

ドイツ人にとってライ麦パンは日本人が米を主食に食べるようなもの。
しっかり学んでいつかドイツ人にも日常使いのパンとして選んでもらえるくらいのライ麦パンを焼けるようになりたい。