僕は日頃、体に染み込んだ感覚的なものを頼ってパンを作っているのだけど、
もう一段階、パン作りのレベルを引き上げるために、発酵の勉強、とりわけ乳酸菌がパン作りに与える影響をしっかり学ぶことは避けて通れないなと思っていた。
ルヴァン=自家培養発酵種を使った僕のパン作りの師匠は、ドイツ人のボス。
温度計やタイマーなどいっさい使わず、すべて経験則と感覚によって進めていくボスのパン作りを間近で見てきて自然と自分もその「型」を習得するべく励んできた。それは僕のパン作りのベースであり迷ったら戻ってくる基礎の部分でもある。
便利な機器を使ったりデータを取らずとも、次の日にはしっかりパンになる、毎日抜群の出来ではなくても、何が原因でそうなったか自分で把握できる姿勢こそ、自分が目指すべきかっこいいベーカーの姿だと思っていた。
しかし、時には一瞬で判断をくださねばならなかったり壁にぶつかる時もあって、自分の”勘”や”直感”をサポートするために、ルヴァンのパン作りの要となる乳酸菌の知識をもっと深く身につけないと上にはいけないと、ずっと感じていた。
そんな時。
ボスに呼び出される。
イタリア人パン職人・ロレンツォがいない今季、どうにかしてリエヴィトマードレ(イタリア生まれのルヴァン=天然酵母。乳酸菌と酵母のバランスコントロールが鍵。)を復活させて、クリスマスにパネトーネを作るようにと、「命令」が下った。それをきっかけに本腰を入れて乳酸菌の勉強を始めた。
もちろん、乳酸菌の勉強はライフワークに据えるくらい壮大な研究の道でもあって、たかだかクリスマスまでの3−4ヶ月で何がどう変わるわけではないのだけど、
また別の角度から成長できるチャンスかなと捉えて少しワクワクしている。
先週から早速、ルヴァンからルヴァンリキッド、そして水分量を減らしたリエヴィト・マードレへとコンバートしていく作業を始めた。
時間、温度、pH、ボリューム、テクスチャー・・データを取りながら、見えない菌の世界のイメージをふくらませる。
今のところ仕事後は睡魔との格闘で、本の理解も進まないけど、なんとかクリスマスにはうまいパネトーネが作れたら良いなと思っています。
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