基本的に人材育成という概念がないニュージーランド。
初代ヘッドベーカーのマルコの存在はパン業界に入りたての自分にとってとても大きいものでした。
南アフリカで生まれドイツで育ったパン屋の4代目職人。ニュージーランドが好きで移住してきた。右も左もわからない僕は何かあればマルコに聞いてやり方を教わったり、ダブルチェックして仕事するようにしていました。
典型的ないわゆる、「師弟制度」のもとで働いたことがないのでわかりませんが、厳しくピリピリした雰囲気の中で毎日の仕事は進んでいくんだと想像できます。
マルコは実に大らかで、マイスターなのでもちろん技術も素晴らしい。
「俺のシェフは寛大だったよ。君の失敗は俺の失敗。だから心配するなって人だった。だからMasaもミスしたって気にしないで良いから。俺がカバーするから。」
彼のおかげで随分と腰を据えてのびのび働かせてもらった気がします。
仕事が速すぎて自分から積極的にいかないと生地にも触らせてもらえないくらいあっという間に仕事を終わらせてしまう。
自分が仕込んだ生地をマルコが焼く。窯出しで「ナイスブレッド!」と声をかけてくれるのがなんとも嬉しくて思い出深いです。
オープン1年目はどこのポジションもカオス状態だったけど、色んなとこをヘルプして、レジまでこなしてお客さんの行列をさばいていました。
一年たって、マルコが会社を去る時はさすがにショックでした。寂しさはもちろん、これから誰に教えを請えば良いのか、そして、この1年もっと貪欲に彼から学べたんじゃないか、少し後悔もしました。それぐらい大きい存在でした。
あれから3年、当時は理解するのが難しかったことも少しはわかるようになった気もします。
自分が人の上に立つようになった時は、マルコのように広い懐でどーんと構えて、「お前のミスは俺のミスだから気にするなー!」と言えるくらいのボスになりたいなと思います。
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