デキュヴェを終えたワインは、樽に移されて長期の熟成期間(エルヴァージュ)に入ります。Sato Winesでは、白ワインは15〜18ヶ月、赤ワインは20ヶ月以上樽で熟成させます。ブドウのポテンシャルを最大限に引き出し、香りや味わいをより良くしていく工程です。


では、そのブドウにポテンシャルを与える要素とは何なのでしょうか?
フェルトン・ロードを訪問したブログの最後に触れた、土壌の話を掘り下げます。土だけに
この研修期間で、ニュージーランドだけでなく、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカなどの名だたるワインを100本以上いただきました。研修に来ている4名のワインメーカーが口を揃えていたのは、「数ランク上のオタゴワインの美味しさ」でした。(銘酒ばかりを飲ませてもらっていることもありますが・・・)

「何も育たない土壌なら、ブドウ植えてみろ。」と言われるくらい、ブドウは場所を選ばず育ちます。
痩せた土地でも根を張って生きようとする。何も育たないような厳しい環境だからこそ、地中深くまで根を伸ばし、その土地ならではの鉱物や微生物に出会い、それが果実の味に深く影響を与えるのです。
Sato Winesの畑にも、その秘密がありました。
この畑には約2億5000万年前のシスト(片岩)が広がっています。さらに、数千年前にワナカの火山が噴火した際に飛んできた火山岩や、水晶などの鉱物も混ざっていて、畑を開く地質調査のために掘った際には、1000トンものそれらの岩たちがゴロゴロ出てきたそうです。
こちらがその岩たち。↓





そのユニークな地層から得られるミネラルや土壌構造が、他では真似できない味わいを持つブドウを育てているのです。
例えばSato Winesのシャルドネ(2022)は、栓を抜いた日と翌日で、驚くほど味が変わります。劣化ではなく、全く別のワインを飲んでいるかのように変化します。佐藤さんは「明日まで置いとけばキラキラ感が出てくるよ。」と表現しますが、まさにそんな感じ。

醸造家がいかに腕を振るっても、ベースとなるブドウが平凡であれば、そのワインが持つ世界観はどうしても限られてしまうのかもしれません。逆に、畑が素晴らしければ、なるべく手を加えずとも、ブドウが仕事をしてくれるとも言えるでしょうか。だからこそ、どんなワインを造りたいかを考えるとき、まず真っ先に向き合うべきは「畑」なのだということを身をもって感じました。特別なテクニックではなく、特別な畑。そこにしかない地質と気候と時間が、唯一無二のワインを生むのだと思います。
そして、そのことは、ワインだけでなく、パンや農作物、すべての“ものづくり”にも共通する大切な視点なんだと思います。

次回の記事でワイン研修ブログは完結です!
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