笑顔で無視されても大丈夫だった

中庭には広大な散歩コースがある

「目の前のお客さんに全力投球。他は笑顔で無視!」
広島の薪窯パン屋さん・ドリアンの「捨てないパン屋」の中に、こんな一節がある。
気に入っている部分だけど、
(すごいな、こんなことできるのかな、)と思っていた。つい先日まで。

昨年、休みをもらって帰国した時に、父のがんが見つかった。食道がん。
精密な検査を受けて、幸いにもステージは0で内視鏡の手術ができますよと先生が教えてくれた。
そして11月に無事に手術も終えて、今は月に数回の先生の診断と、内視鏡検査で患部の回復具合をみてもらっている。
もうすぐ、半年に一度の定期診断に切り替えられるところまで来た。
本人も元気で根治に近づいている。

父の付き添いで、がんセンターに何度か足を運んできた。
びっくりするのが患者さんの数。本当に多い。
今は、二人に一人はがんに罹るらしい。

検査が終わって、
「この後、先生の診察になりますので少々お待ち下さい」
と受付で言われて、1時間以上も待つことが普通にある。

(ずいぶん時間かかってるな〜。こっちは予約してるのに、、、)

とか思ったりもするけど、
遅れていてもスタッフの方たち、慌てるそぶりがまったくないのだ。

笑顔で無視されているような雰囲気。

急いでやっている風にも見せない先生たち。

余裕がある。ゆとりがある。

そしていざ、順番がくると。

先生はこちらの質問、疑問に関して、

丁寧に、時間をかけて、詳しく説明してくれる。

困ったことはないか、生活はどうですか、今日の検査結果はこうなっているので、もうちょっとだけ続けてみましょう、次回はこうしましょう、と言った具合に。

こちらの不安を取り除くかのようにゆっくりと、こちらが納得いくまで付き合ってくれるのだ。

「患者さんと家族を徹底支援する」というがんセンターの理念。

目の前の患者に全力投球、他は笑顔で無視!

パン屋さんも医療機関もフィールドは違えど

目の前にいるお客さんを一番に考えて全力を尽くせば

それは安心と信頼につながるんだと思えた出来事だった。

待っている間に乳酸菌の本読んでたら、
(すごくはしょると)乳酸菌とることでがんの予防が出来て、
ここも繋がるのか〜と思ったり、
病気から遠ざかるためには食べて体に良いパンを作らないとな〜と身が引き締まったり。
あらためて自分の方向性を見つめ直す時間になっている。

家族の付き添いで来ているのに、なんだか、

一番気づかさせてもらっているのは自分だなーと

麻酔がまだ切れていない父とゆっくり歩きながら感じたのでした。